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線形代数の話(線形写像)

線形代数の世界 線形代数

主成分分析を理解するための線形代数第三弾です。今回は線形写像とそれにまつわる量について解説します。
前回の記事はこちら。

基底と線形独立性の解説
線形空間を知るためには、線形空間の元がどんなものか調べる必要があります。線形空間には、必ず0がありますが、他にも存在が保証される特別な元の組があります。それが基底です。基底の何が嬉しいか確認したのち、定義や例を紹介します。
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線形写像の定義

線形写像とは名前の通り線形な写像です。もう少し言うと、線形空間の性質を保つ写像です。正確な定義を書きましょう。

V,WK 線形空間とし、f:VWを写像とします。f線形写像であるとは、以下の性質を満たすことです。

  1. 任意のv1,v2Vに対してf(v1+v2)=f(v1)+f(v2)
  2. 任意のaK について、 f(av)=af(v)

線形写像f が全単射であるとき、f同型写像と呼び、V,Wの間に同型写像が存在するとき、V,W同型であると言い、VWとかく。

一番単純な線形写像は、全ての元に対して0を対応させる0:VWです。また、aKに対して、a:VVa(v)=avで対応させると線形写像です。さらに、線形写像f:VVに対してaff+a(af)(v)=af(v),(f+a)(v)=f(v)+avとすることで、またしても線形写像になります。また、線形写像f,g:VWの和を(f+g)(v)=f(v)+g(v)で定めると、線形写像です。つまり、K線形空間の間の線形写像全体の空間はK 線形空間になります。線形写像の性質を使って確かめてみてください。単位元は 0:VW です。

線形写像に慣れるために、簡単な性質を証明してみます。
線形写像は、定義から0K に対して、 f(0)=0ですが、f(v)=0であるからと言って、v=0とは限りません。行き先が0になっている元をf のカーネルと呼びますが、kerf={vV|f(v)=0} でカーネル全体を表します。今述べた問題は、カーネル全体が0だけか?という問題です。それについては、以下のように答えられます。

V,WK 線形空間とし、f:VWを線形写像とします。以下は同値です。

  1. kerf=0
  2. f は単射

[証明]
1が成り立つとしましょう。このとき、fが単射であること、つまりf(v)=f(w)ならばv=wを言えば良いです。線形写像の定義から、逆元は逆元に移ることに注意しましょう。(1v=v) であり、f(v)=f(v) です。
f(v)=f(w)f(v)f(w)=0f(vw)=0
このことから、vwkerf=0です。線形空間において逆元はただ一つなので、v=wです。逆も同じ感じに示せるので示してみてください。

単射の話が出たので全射の事も書いておきます。証明は全射の定義そのままなので書きません。

V,WK 線形空間とし、f:VWを線形写像とします。以下は同値です。

  1. fは全射
  2. f(V)=W

このことと、前の性質から次の事が分かります。
fが同型写像である事と、f=Wかつkerf=0は同値

全射や単射の例を挙げておきます。

p1:R2R , i1:RR2を以下で定義します。
p1(x,y)=xi1(x)=(x,0)
p1は全射線形写像で、i1は単射線形写像です。一方で、p1は単射ではありませんし、i1は全射ではありません。
p1は x-y 平面からx軸への射影であり、i1はx軸のx-y平面への埋め込みです。
この例から、全射である事と、単射である事には関係が無い事が分かります。

全射であることはなんとなくイメージが着きますが、単射であることはイメージが湧きにくいかもしれません。カーネルとは何かを考えると良いです。
定義から、カーネルというのは線形空間の原点0に潰れてしまう元全体の事です。例えば、上の例でのp1では、y軸上の点がカーネルです。射影をイメージすると、y軸が原点に潰れてしまうのが分かると思います。一方で、i1のカーネルは0だけです。カーネルの大きさはVの情報をどれだけ失わずにWに伝えられるかの指標になっています。
基底を使う事で、抽象的な線形写像を具体的に表示することが出来ます。

線形写像の行列表示

V,WK 線形空間とし、f:VWを線形写像とします。 fを目に見える形で書き表しましょう。
V,W の基底として、(v1,,vn) , (w1,wm)を取ります。各viに対して
f(vj)=aijwi
とします。この時、aj=(a1j,,amj)を縦ベクトルとして、ajたちを横に並べて出来る行列
A=(a11a12a1nam1am2amn)
f行列表示と呼びます。この意味を確かめましょう。
x=aixiy=f(x)=bjyj
と置きます。VKn,WKmという標準的な同一視を行っておけば、x,yKn,Kmでのベクトルa=(a1,,an) , b=(b1,,bm)と見なせます。このベクトルと行列表示Aについて次の関係があります。
b=Aa
定義になんとなく違和感を覚えませんか?その違和感の正体を確かめるために例を考えましょう。

f:VV を線形写像とし、Vの基底を v1,v2とします。また、以下のようにfの値を定めます。
f(v1)=av1+bv2f(v2)=cv1+dv2
このとき、fの行列表示は定義から以下のようになります。
A=(acbd)
なんとなくイメージではこの行列の転置
AT=(abcd)
が行列表示のような気がしますが、定義ではそうではないのです。
ATが行列表示になるように定義を変えて欲しいと思ったりもするわけですが、それはそれで困った事が起きます。
線形空間V上での等式f(v1)=av1+bv2が、標準的な同一視を経て、 K2上でベクトルと行列の等式として成り立ってほしいと思うのは自然な考えだと思います。K2での等式は以下です。
A(10)=(ab)
これを成り立たせるには、Aは定義のような形でなくてはならないのです。

線形写像があると、基底を定める事で行列が定まる事が分かりました。逆に、ベクトルと行列からなる一次式があれば、線形写像の理論を使ってその方程式を解く事が出来るのです。

y=Ax という式を解くことと、Aを行列表示に持つ線形写像, f:VVの逆写像を求める事は同じこです。

まとめ

  • 線形写像を定義した。
  • 線形写像の行列表示を定義した。
  • 線形写像があることと、1つの連立一次方程式があることは同じこと。
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